手の届く距離

「ごめん、晴香さんと住む世界が違うのかも」

キャパシティーオーバーで、思考を放棄する。

「そうねぇ。祥ちゃんは潔癖っぽいし。でもこれからたくさん見ると思うわよ。世の中にいっぱい転がってるから、イヤでも出会うわ。今の祥ちゃんみたいに、すっぱり割り切れることばかりじゃないしぃ」

言われたことが、友人たちのどの顔も全く心当たらないので、理解への白旗を揚げる。

晴香さんにだって、想像がつかない。

・・・想像したくない。

自然と意識が回避しているところが、潔癖といわれてしまう所以か。

「祥子ちゃん」

もんもんと考えてしまった私は、静かに呼ばれて意識を晴香に戻す。

「正直ね、広瀬さんのことクロの可能性が限りなく濃厚だと思ってるの」

真面目な顔で晴香はこちらを見据える。

笑い飛ばせる空気ではなかった。

「晴香さんもあんまり広瀬さんと接点ないじゃないですか」

「じゃあ、祥ちゃんは?」

苦し紛れの反論は、自分の首を絞めるだけだった。

「これから、ですねー」

視線を泳がせて答える。

「だったら、私の情報聞いて。聞いてから判断してもいいでしょ」

晴香は姿勢を正し、組んでいた足もそろえて正面を向く。

晴香さんの覚悟を受け取って、こちらも身構える。

「歓迎会にしてきてた腕時計。あれは有名ブランドのペアウォッチ。歓迎会の後で調べたからやっぱり間違いない思う。一人暮らしっぽいけど、地元を教えてくれないのが何か怪しい。新しいデートスポットはチェックしてるみたいだし、最近の恋愛映画について、映画館に行ったという証言ゲット。女がいそうでしょ?あとは」

「ストップ」

次々と晴香の口からこぼれる情報に待ったを掛ける。


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