エレベーター

『あと、一歩。』


中西さんがニタリと笑った。


もう一歩…?


足を出そうとしたその時、中西さんが楽しそうに呟いた。


『…オマエモ、シネ』





同時に、真由ちゃんがわたしにしがみつく。


わたしはハッと我に返った。


真由ちゃんの腕から、茶色いくまのぬいぐるみが落ちた。


ぬいぐるみはわたしの足元に一度落ち、エレベーターの中へ転がった。


ぬいぐるみの行き先を目で追う。


エレベーターの床であるはずのそこは、空洞になっていた。






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