エレベーター
『真由を、頼みます。』


真由ちゃんのパパは、わたしに向かって深々と頭を下げた。



わたしは涙を堪えて頷いた一。


『真由ちゃん。行こう。』


『パパ!バイバ〜イ!後でね〜!』


嬉しそうに叫ぶ真由ちゃんを目隠しするようにして、わたしは真由ちゃんを抱き上げた。



真由ちゃんがわたしの腕の中ではしゃいでいる。


もう一度真由ちゃんのパパに目をやる。


頭を下げたままの真由ちゃんのパパの体は



まるで


スローモーションのように


崩れ




最後に残った眼球は



パン



と、




弾けて、消えた一。




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