君のココロの向こう側
はにかむ隆太郎を前に、好きだなぁ……って心から思った。

この人の、全てが好き。

こんなに愛せるのは後にも先にも君だけだと、このとき、そう感じたの。





また当たり前になった、別れのキス。

私も笑顔を心掛けるようになり、喧嘩も減った。

卒業式も終わり、桜の蕾がピンク色に染まり始めた頃。

遂に、隆太郎が地元を発つ日がやってきた。



友達と一頻り別れを惜しんだ後、一緒に駅へと向かった。



「隆太郎……電車来たよ」

「……まだ、大丈夫」



その言葉で、君が乗る筈の電車を何本見送ったかな。

ホームの傍の椅子に手を繋いで座り、隆太郎に少しだけ凭れかかる。

昔観た映画のワンシーンみたいね。



「……」

「……」



流れていく人々がスローモーションに見える。

いっそ、時が止まればいいのに。



「隆太郎」

「……ん」

「向こうで……風邪引かないようにね」

「うん」

「野菜、腐らせないようにね」

「……うん」



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