キスの意味
「塚本が謝る事じゃない。ただ、彼女の仕事に対しても、お前に対しても、一生懸命な気持ちは、見ていてよくわかったから」

「はい。自分も、わかっているつもりです」

「今日は最後になるから。村瀬君も、遠慮しないぞ」

かなり積極的に塚本さんを誘っていた村瀬さん。

それでも塚本さんが、当たり障りのない感じで断っていたら「では、また今度」と、最後には引いていた。

同じ課に所属し、毎日顔を合わせて仕事をしなければいけない。

塚本さんも村瀬さんも、“決定的”な結論は出さないようにしている。

宮前さんには、そう見えたそうだ。

多分、周りの誰もが、そう見ていただろう。

「そうですね」

塚本さんが静かに答えて、その事についての会話は終わったそうだ。

「歓送迎会が始まってみれば、塚本さんは、ずっと村瀬さんの隣だし。村瀬さんを送って行くとかで、酒は飲んでないし」

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