私とメガネくんの秘密のレッスン




side 白石 潤




鈴村彩乃の数学の出来ないレベルは、
俺の想像を遥かに越えるものだった。


あまりにも覚えが悪くて、
イライラしっぱなし。

その時点で俺には人に教えることは
向いてないことを実感した日でもあった。


解けない度に俺に凄まれ、
半泣き状態でプリントをやる鈴村彩乃。


無意識なのかもしれないが、
たまに潤んだ目で俺を見上げるから
イチイチ胸が騒がしい。



それぐらい彼女の目は、
引き寄せられる何かがある。



俺が電話をしているときも、
チラチラこっちを見ているのはわかっていた。

突き抜けるんじゃないかってぐらい
見つめられ過ぎて、

気が付いたら俺の素のままで電話していた。


本当の俺を知られたくなかった筈なのに
気が付いたときには既に遅くて…


きっと鈴村彩乃も
混乱したに違いない。



だから




『言っときますけど、
 電話の時のが素の僕です。

 まぁもうあなたに見せることは
 ないでしょうけど。』



『え?
 えと……はい。』



『それと一応言っておきますが
 僕があなたの家庭教師をやってることは
 くれぐれも秘密にして貰えます?
 友達にも…家族にも。』



『は……はい!』



『あと…
 学校では今まで通り話しませんので
 そこのところは了解してください。』



『わ…かりました。』




歯切れのない返事が返ってきたけど、
すでに先手を打ち済み。




『言っておきますけど、
 僕はあなたと同じクラスです。

 ですからあなたがどれだけ
 理解してるのかもすぐにわかるんです。

 僕が教えといて出来てなかったら…
 分かってますよね?』



『はっ、はい!
 頑張ります!』





たっぷりと脅しを掛けておいた。



彼女の怯えっぷりは
俺の心が擽られてブレーキが
利かなくなりそうだ。



この感覚が何なのか理解しかねるけど、
何れにせよ、
俺は彼女に勉強を教えるだけだ。




面倒なことを引き受けちゃったけど、
まんざらでもない自分がいる。




「……鈴村彩乃。」






side 白川潤 end














< 24 / 66 >

この作品をシェア

pagetop