風がさらった恋心。




顔を上げ、ゆっくりと振り向くと、声以上に優しい顔をした一岡くんがいた。

目が合うと口をぎゅっと結んで、少し照れ臭そうな顔をして頬杖をつく。


その表情を見て、ダメだと思った。

声を発することも出来なくて、視線を逸らすことも出来なくて、手のひらを力一杯、握りしめる。




「……千葉さん?」




何も言わない私に、そのまま不思議そうに首を傾げる一岡くん。


ざわざわと騒ぎ立てる胸が煩くて、苦しい。

手のひらに爪が食い込んで痛い。


ねえ、一岡くん。

君はやっぱりとても不思議な人だ。



あるはずの君と私の世界の境界線を見えなくさせて、私にも飛び越えられるんじゃないかって思わせる。

そっち側に、もう一度踏み込んでみたくなる。





「……え?本当に、どうしたん?」




……君に、近付いてみたくなる。

一岡くんのことを、知りたくなる。



違う。そんなわけない。

必死で自分に心の中で言い聞かせて、芽生えようとする何かに蓋をしようとする。




ーーだって、これじゃまるで、恋に落ちたみたいじゃない。





< 35 / 35 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

[短編]初恋を終わらせる日。

総文字数/28,629

恋愛(純愛)68ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
本当に一番バカだったのは、 間違いなく君だよ。
太陽に触れても、

総文字数/19,738

恋愛(純愛)46ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
太陽に触れても、火傷するだけだ。 「ーー梓!」 誰よりも側にいて、 私は君を想ってきた。 いつだって眩しいほどに真っ直ぐで、 光琉は私の青春だった。 * ・ 夢も恋も 一瞬で散った、夏。 ・ * 「俺が、夢になってみせます」 ーーあの日言えなかった言葉を、 今から君に伝えよう。 野いちご10周年記念の限定小説です。 小説を読むためのパスワード取得方法は、 5月30日(火)に野いちご10周年ページにて発表予定です。
続・迷惑なイケメンに好かれました。

総文字数/34,142

恋愛(キケン・ダーク)99ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
色々あってストーカーくんが 彼氏になりました。 芽依、持田、千春、空 市原くん、そして莉子。 **本編のその後のお話を 様々な視点からお送りします**

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop