課長、ちゃんとしてください。
「………痛くなかったですか?」






ぼそぼそと訊ねると、課長は「なんくるないさ〜」と不思議な抑揚で言った。




たぶん、なんともない、ということだろう。






「すみませんでした。

気がついたら投げてました」






「ん〜、べつにいいんだけどね〜」






課長は軽く笑ってから、






「ただ、なんでなのかな〜っていうのはー、気になったけど〜」






と言って、ちらりとあたしを見た。




手鏡を投げた理由。




それに思いあたって、顔が火照る。






ぱっと俯いて、「わかりません」と呟いたけど、さすがに白々しかったかもしれない。






< 197 / 222 >

この作品をシェア

pagetop