kiss of lilyー先生との甘い関係ー
 わたしは公園で息子が友だちにからかわれているのを見ている母親みたいに、先生のことを見ていた。微笑ましく見守るのが9割、でもこんな感じで将来大丈夫かしらっていう心配が1割。

 だけど当の水樹先生は微塵も気にしていないみたい(むしろ気が付いていない?)。きっと列の長さなんて彼の頭の中にはないんだろうな。

 いま読んでいる本は座ってでも読む本だろうから、立って本を読むか座って読むかの違いだけで。基礎体力が高そうな彼にとっては、言ってしまえばほとんど違いがないのかもしれない。

 そして例えば横入りしてきた人物に”忘れ物をとってくるから荷物を持って待っていてほしい”と言われても、きっと彼は快くそれを引き受けるだろう。

 ”えぇ、いいですよ”と言っている姿が容易に想像できる。


「何を笑っているんだ?」

 そんな考え事をしているうちに水樹先生は昼食を買い終えて、定食を乗せたトレーを置いてわたしの前に腰掛けようとしていた。

「なんでもない」

「そうか」

 わたし用に買って来てくれたドリンクを有り難く受け取った。
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