kiss of lilyー先生との甘い関係ー
「うわ、人多い」
わたしたちは午後からはじまる例の講義に出るために、カフェを出て学校の本館へ向かった。あかりの言う通り、教室は結構なぎわい。
つまらなかったら抜け出せるように座ろうとしたドア側の席は諦めて、反対側の窓際へ移動した。前から十列目くらいの、二つ連続で空いていた席に着席。工学部系は九割が男性なのに、ここにいる男女比が半々くらいなのはその噂の先生のせいかしら。
「ギリギリまで寝てるから」
「はいはい」
カフェのとき同様に机にうつ伏せた彼女を横目に、わたしは先ほどの本の続きを読み出した。
・・・
十分ほどして、ざわめく講堂が急に静まりだしたから目を上げた。
確かに水樹先生は格好良かった。
背が高くてすらっとして。距離があったのと眼鏡をかけていたせいで顔ははっきりと見えないけど、シャープで端正な感じ。ちょっとくせっけのある焦げ茶の髪も好感が持てた。
性格は几帳面だろうな。毎朝ハンカチを丁寧に当ててそうな、奥さんや彼女がいても洗濯とかアイロンは自分でやりそうな、そんなタイプ。
彼が仕立てのいいスリーピーススーツをまとって教壇に向かうあいだ一瞬目があった気がした。だけどそれはたぶん気のせいで。だって講堂には三百人を越える学生が座っていたから。
「授業を始める」
先生が持っていた書類を教壇においてマイク越しにそう言ったとき、
「いい声だね」
あかりがいつの間にか起きていてわたしに呟いた。机に肘をついて手に顔を乗せて、品定めするように先生を見ている。
この女は…こういうとこちゃっかりしてるんだから。また飽きれ半分で彼女を見ちゃった。
わたしたちは午後からはじまる例の講義に出るために、カフェを出て学校の本館へ向かった。あかりの言う通り、教室は結構なぎわい。
つまらなかったら抜け出せるように座ろうとしたドア側の席は諦めて、反対側の窓際へ移動した。前から十列目くらいの、二つ連続で空いていた席に着席。工学部系は九割が男性なのに、ここにいる男女比が半々くらいなのはその噂の先生のせいかしら。
「ギリギリまで寝てるから」
「はいはい」
カフェのとき同様に机にうつ伏せた彼女を横目に、わたしは先ほどの本の続きを読み出した。
・・・
十分ほどして、ざわめく講堂が急に静まりだしたから目を上げた。
確かに水樹先生は格好良かった。
背が高くてすらっとして。距離があったのと眼鏡をかけていたせいで顔ははっきりと見えないけど、シャープで端正な感じ。ちょっとくせっけのある焦げ茶の髪も好感が持てた。
性格は几帳面だろうな。毎朝ハンカチを丁寧に当ててそうな、奥さんや彼女がいても洗濯とかアイロンは自分でやりそうな、そんなタイプ。
彼が仕立てのいいスリーピーススーツをまとって教壇に向かうあいだ一瞬目があった気がした。だけどそれはたぶん気のせいで。だって講堂には三百人を越える学生が座っていたから。
「授業を始める」
先生が持っていた書類を教壇においてマイク越しにそう言ったとき、
「いい声だね」
あかりがいつの間にか起きていてわたしに呟いた。机に肘をついて手に顔を乗せて、品定めするように先生を見ている。
この女は…こういうとこちゃっかりしてるんだから。また飽きれ半分で彼女を見ちゃった。