kiss of lilyー先生との甘い関係ー
「それで? どうだったんだ、京都は」

「きれいでしたよ、景色もお寺も舞子さんも」

 やってきたのは表参道の小料理屋。地下にひっそりと佇むこのイタリアンは、美味しくて一人でも来やすいという理由で先生のお気に入りらしい。

 大通りに面してはいるものの、”ひっそりと”という形容詞を使うのは入り口が細くて一見レストランだとわからないからだ。ただ入り口と同じように細い階段を下りると、中は別世界のように明るかった。

 暖色の赤でまとまった内装が、イタリアのにぎやかな夜を演出している。堅苦しくなくかしこまっていないが、絶対に美味しいものが出て来るだろうと安心させる雰囲気。客層は三、四十代なのだろう。明るくてもうるさくはない。

 イタリア人のおじさんが釜でピザを焼いていて、同じくイタリア人であろう鼻の高いボーイさんは水樹先生に気が付くと”奥の席を使ってくれ”と合図した。
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