kiss of lilyー先生との甘い関係ー
「あれは売り物ですか」

 しばらくして水樹先生は、戸棚の横のバスケットに入ったマグカップを指して聞いた。

「えぇ、そうよ」

 まきちゃんは何を話すのも嬉しそうだ。

「せっかくだし、どれかプレゼントするよ。研究室で飲む用のを」

 まきちゃんの肯定に対して、先生がわたしに向き直ってそう言ってくれた。

「いいの?」

「あぁ、好きなのを選ぶといい」

 わたしは喜んで見に行った。コロンとした形のシリーズでかわいい。何色もある…ブルー系が綺麗ね。青か水色のどっちにしよう。

「僕のもそろそろ新しいのに変えようかな」

 わたしが選んでいる隣りで、先生は青のカップを取った。

「じゃあわたしは水色の…」

 最後まで言い切る前に、まきちゃんがカウンターの下から脚を伸ばしてわたしに蹴りを入れた。

「ユリちゃんはピンクのなんていーいんじゃな〜い?」

 わたしは引きつった顔で「えぇそうね」と答えた。

 ”痛いじゃない、なにするのよ”
 ”男と女で、青と水色のお揃いなんて何考えてんのよっ。ここはピンクに決まってんでしょ、青とピ・ン・ク”

「…」

 それは、わからなくもないけど…やっぱりまきちゃんは乙女ね。ピンクも綺麗な色だからいいか。
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