夫婦ですが何か?




「ねぇ、理由はどうあれ俺と千麻ちゃんは結婚したんだよ?」


「理解しております」


「確かに横暴で非常識なお願いだったと思うけどさ、乗った千麻ちゃんも同罪でしょ?」


「・・・・・・だから・・・・、お付き合いしているじゃないですか、私なりに真剣に副社長の傷心を慰める様な夫婦ごっこに」



私も大概情のない女だと思う。


人が傷つきそうな言葉を平気で口にして相手の傷をえぐるんだ。


今まで怒気ばかりだった目の色が少し変わった気がする。


一瞬酷く悲しげに感じ、すぐに躊躇いに揺れる。


そして弾かれる確認の言葉。





「・・・・・・俺を愛する努力はするつもりない?」



「愛してますよ?」



「・・・・」



「契約の上で」








【結婚】という名の契約の上で。


その期限の間では。






ーーーーー1年ーーーーー







沈黙。


怒っているのか悲しんでいるのか、私の返答に口を開かなくなった彼の手が操作盤から離れたのを確認すると、扉の横の方の操作盤の開を静かに押した。


ゆっくりと開く扉と再び入りこむ外気。




「お仕事ですよ」




開くを押したまま彼を振り返り促すと、不機嫌な空気を纏って歩き出した姿。


でも今更そんな空気に畏怖したりもしない。


良くも悪くも慣れているのだから。


そして私の横をスッと甘い香りを残して抜けた。


筈だった・・・、


抜けたのに、


ああ、絶対に遅刻。


抜けた直後に思い出したように振り返った彼が酷く乱暴に私をエレベーターに押し戻すと壁に縫い付ける。


そしてグッと近づいた綺麗だけども鋭く冷たい笑み。



「・・・・忘れてた」


「はっ?」



散々な行為と多少の乱暴さに顔をしかめて反応を返せば、その反応が今のごちそうだと言わんばかりにニッと笑った男。


次の瞬間には首筋に熱と微々たる痛みが与えられる。


触れて場所を示しその位置にきつくしっかりと刺激残す。


走った痛みで何をされているかなんて嫌でも理解して、さすがに押し返そうとするのにしっかりと壁に固定された手首。


私の抵抗なんて抵抗に値しないと、チラリ絡んだグリーンアイが笑う。


このガキ・・・。


思わず言葉にしたら口の悪い響きになるそれを頭で叫んで、それでも押さえこまれる体に再度の刻印。


紅い紅い・・・・独占欲の印。






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