夫婦ですが何か?
僅かな酸素を貪って、その量に見合わない二酸化炭素を吐き出している。
酸素不足で頭がぼんやりするのに、それすらもこの時間を熱を高める要素だと受け入れ浸る。
酸素以上に取り入れる量多い二酸化炭素は自分の物じゃない。
彼の・・・。
玄関で飢えの限界だとお互いに食いつくようにキスを交わしてどのくらい?
未だにその感触に溺れながら前菜というように余すことなく貪るように求めて舌を絡める。
その体はしっかり密着させて、お互いに興奮故か心音が速いことも伝わってしまう。
でも羞恥しない。
お互い様。
ただ今は目の前の存在が欲しくて欲しくて、全てなくなるまで食い尽くしたい欲求に満ちる。
薄暗い玄関。
気が付けば紅く染まりつつある外の光が窓から入り込んで伸び、2人にぎりぎり触れることない位置で留まっていて。
まだ扇情的な時間にはだいぶ早い。
でも・・・、
私たちがこうなるには遅すぎた時間。
「ーーーっはぁ・・・・千麻ちゃん・・・キス上手い」
「・・・はぁっ・・はっ・・お褒め頂き恐縮です」
離れても名残のようにお互いの唇を繋ぐ透明な糸。
いつもの【らしい】2人の会話を挟むとすぐにそれを手繰って再度重なり合う唇。
キスを交わしながら座っている彼の足を跨ぐように身を下し、それを補助するように彼の指先が太ももを這った。
そのまま着ていたパーカーの裾から体のラインを明確にするように上がっていく指先。
太腿から臀部を滑り尾骶骨をくすぐられれば熱の上昇。
だけどここからは彼の意地悪。
尾骶骨から腰に滑った指先があえて今まで以上に焦らすように這い上がって、思わず唇を離すと子憎たらしく軽い笑い声。
非難するように僅かに自分より下のグリーンアイを睨めば的外れな答えが返される。
「・・・可愛くて」
心底そう思っているように見つめ上げてくるから一瞬の思考。
すぐに返したのは、
「眼科の予約入れておきましょうか?」
「照れ隠し?」
「いや、本当に視力が衰えているのかと」
じゃなければ私を【可愛い】と判断する脳がヤバいのか。
どうしても自分の中の理屈が通らないと眉根を寄せれば、何故か噴き出した彼が困ったようにクスクスと笑って私の体を更に引き寄せた。
そして顎をトンと胸の谷間よりやや下につけ見上げる仕草。
ああ、これ!
これが【可愛い】という事だと思うのに。
彼の何気ないその仕草に不覚にも少しキュンとして、でもその心情読み取られたくなくやや乱暴にわしゃわしゃとその頭を撫でてしまう。