夫婦ですが何か?


ーーーーNEXT MORNINGーーーー




寒い。


布団から身を出した瞬間から感じていた寒気。


布団で温められていた体が一瞬で凍えそうなそれの原因をリビングの窓から見えるそれで理解した。


白くチラチラとしたものが浮遊した世界。


窓が結露していつもよりぼやけて見える視界に、すべてを冷やさんとするように厚い雲から舞い落ちる雪。


寒いわけだ。


そう思ってカレンダーに視線を走らせる。


大きく目につく数字は12を記して、ゆっくり頭の中で小さな数字を追う。


そして気がつくのは今週末はクリスマスだという事実。


かといってそれに浮れる心もなく、サンタクロースを信じるメルヘンな私でもない。


関係のない行事だとTVのスイッチを入れキッチンに向かった。


日曜日の朝。


時間に囚われない朝の余裕に安堵し並ぶコーヒーの種類を選ぶ。


コーヒーのフィルターに挽いた豆を投入した頃だろうか、耳に入り込むクリスマス定番の洋楽が浮れて響き。


でもさっきからついているニュース番組からではない。


そしてその歌声は徐々に近づき、溜め息をついた時にはすぐ横にまで接近していた。



「おはよう千麻ちゃん」


「・・・・・おはようございます」



色々と物申したい気持ちはあるけれどとりあえずマナーとして朝の挨拶を返すと、にっこりと微笑みながら冷蔵庫からミネラルウォーターを手にした彼が再びその歌声を再開。


別に嫌がらせとかではなく気分のそれなのだろう。


熱唱しているでもなし、個人の気分による鼻歌のようなものを自分の気分じゃないから止めろとも制する事は出来ない。


ただ思う。


もしかしてクリスマスに浮れているのだろうか?と。


どうしよう?


クリスマスにサンタのコスプレするのをサプライズとしていたら。


そんな一抹の不安を抱きながら手馴れた朝食を作り上げていく。


今も継続の彼の歌声をBGMに徐々に温まる部屋の独特な暖房機器からの熱の匂いを感じて。


ああ、冬なんだなぁ。と改めて感じながらコーヒーをカップに注いだ。


そしてソファーの上でなくその足元のラグの上に座ってTVを眺めている彼の隣にコーヒーを持って座ってみる。


しばらくはぼんやりとコーヒーを飲みながら画面のニュースキャスターを見つめ、不意に、




「千麻ちゃぁん」


「・・・・はい、」


「今週末はクリスマスですねぇ」


「はい、暦上」


「我が家はいかが過ごしましょうか?」


「・・・・・クリスチャンではないのでいつも通りでいいのでは?」


「え~、プレゼント交換はぁ?」


「別に欲しい物もございません」


「そんなこと言わないでよぉ、俺なりに色々サプライズでプラン立ててるのにぃ」


「スカーレットスーツな紳士の真似事なんてサプライズでしたらご遠慮します」


「・・・・」


「何故黙る・・・・」



どうやら懸念したそれは彼の中にもうあったプランだったらしく、気まずそうに視線をそらしての苦笑い。


先に牽制しておいてよかった。

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