夫婦ですが何か?
さて、先攻後攻か・・・。
そんな事を確かめるように一度中の様子を伺ってからの入店。
いらっしゃいませ。の声を耳に取り入れながら視線を店内にぐるりと走らせ、犯罪者まがいの姿を探す。
もう見慣れたレジの列にも後ろの空席ばかりの店内にもその姿はない。
どうやら・・・・先攻・・か?
よく周りを見渡しながらいつものカウンター席に向かい鞄を置く。
でもいつもの様に中身を出さないのは基になるデーターを取られていて意味がないから。
仕方なく財布を手にするとまだ若干込み合っているレジの列に並んで何の気なしに自分の爪を見つめた。
決して強調しない色味の茶色に近いピンク。
色はその一色で過剰な装飾はしない。
次は何の色にしようかと考え新しい色でも新調しようかと悩んでいれば、意外とすんなり巡ってきた自分の番。
朝の店員は行動が速くなくてはやっていけないという事か。
きびきびと注文をこなす笑顔の綺麗な女の子にいつものごとく言いなれたメニューを口にしていく。
「ヘーゼルナッツのコーヒーホットのLで以上でーーー」
「あと、同じのもう一つ、」
注文をさくっと終わらせ財布を開きかけていた瞬間に横から滑り込んできた姿と声に一瞬で緊張。
お札を掴んだ手がそのまま硬直し、ぎこちない動きで滑り込んできた姿を振り返れば。
出た。
犯罪者。
「フフッ、おはよ~、千麻ちゃん」
「・・・・・犯罪者に知り合いはいません」
「酷いなぁ。すべては千麻ちゃんの為の愛ある装いじゃない」
「服の事じゃありません。もっと本格的に犯罪めいた事私にしましたよね?」
「・・・・・・・千麻ちゃん、・・あの激しく熱い夜の日々は同意あってのーーーっ痛ーーーーーーーーーー」
さすがに平手打ちや罵倒は出来ない。と、咄嗟に判断した頭が自分の足に命じて彼の足を思いっきり踏みつけるという制裁。
彼が痛がっている間に不本意にも彼のコーヒー代も払ってしまうとその列を離れた。
追って彼も大げさに足を引きずって不愉快そうについてきて、コーヒーの受け取りカウンターで並んで立つ。
「千麻ちゃん・・・なんかちょっと前より手が早くなった?いや、今は足だったけど・・・」
「犯罪者が猥褻な言葉攻めしてきたので正当防衛したまでです」
「でも・・・・その犯罪者に会いたくて来たわけでしょ?」
「ストーカーの言い分ですね。もう、面倒なので早くメモリ返してください」
余計な言葉遊びは不要だと盗んだ物の返却を促せば、タイミングがいいのか悪いのか注文したコーヒーが2つ笑顔の女の子から差し出され腰が折れた。