夫婦ですが何か?
ーーーーREHABILITETIONーーーー
コーヒーを時々口に運びながらPCの画面と真剣に睨めっこ。
人が真剣になっている横で他人事のようにコーヒーを飲みながら私の横顔をにこにこしながら眺める男。
刺すような視線にイライラしながら表示される多数の件名を一つ一つ確認して、途中で自分一人が必死なのに馬鹿らしいと目を細めた。
「すみません。私ではなく画面の確認をお願いしたいのですが?」
「ちゃんと見てますよ~、千麻ちゃん見ながら時々ちらりと」
「逆です。目的の割合がおかしい」
「あっ、じゃあ千麻ちゃんを見るのはやめなくていいんだ?」
「っ・・・・揚げ足を・・・、そもそもあなたが調べろって言ったからこうして私がーーー」
「だって、こういう点は千麻ちゃんのが有能でしょ?信頼してるんだよその間違いのない仕事ぶりに」
「・・・・・・・・もう秘書ではないのでそう言った駆け引きの言葉に乗せられる私でもありません」
フンとコーヒーを口に運び顔を真逆に背けて不貞腐れてみれば、小さくこの状況を楽しんでいる笑い声が響き。
さらり。
一つにまとめている髪が風もないのに揺らされる。
ゾクリと感じて瞬時に揺れを止めるように押さえて彼を振り返れば、片腕で頬杖をつきもう片手が悪戯したままの位置で不動になっている。
私の髪を悪戯した。
そして視線が絡めば悪びれないような口元の弧。
「勝手に触らないでください。あなたアレルギーだとお忘れですか?」
「だからこそのリハビリでしょ?少しずつでも慣れてもらわないと」
「・・・・チッ・・・」
「うわぁ・・・、なんか言葉以上に悪意を感じる~」
事あるごとにリハビリを掲げて接触を図る男に、いくら言葉を返しても喜ばれるだけだと舌打ちで返す。
どうやら効果覿面だったのか不貞腐れた姿が視線を逸らしてコーヒーを飲みだしたのにようやく安堵。
少しばかり早くなった心臓を宥めるように息を吐くと、そっと押さえていた手を外し髪の毛を自然に揺らした。
さぁ、切り替えて継続だとPC画面に視線を向けた瞬間。
「・・・・力抜いて・・・」
耳に入り込んだ声と、同時にはらりとばらけた髪の毛。
驚く間もなく髪を掻きあげるように絡み付いてくる彼の手。
でも感じる、革一枚挟んでの。