夫婦ですが何か?
ーーーーONE DAYーーーー
一瞬、ぼんやりと考え込む。
昨夜鍵をかけ忘れただろうか?と。
その答えにすぐに否定を返し、でも自分のミスも理解する。
ガードロックは忘れていたと。
それでも・・・・。
「何をしているんでしょうか?」
「ん~、【生殺し】って言葉を痛感しながら我が最愛の眠り姫を指咥えて見てた」
「【生殺し】より【不法侵入】という言葉をしっかり頭に刻んでほしいです。あっ、補足で【犯罪】だという事も」
刺々しく言葉を強調しながら目の前で私を見下ろす男を見つめ上げる。
まだ朝と言える時間。
自分が横たわっている場所も心休まる休息の地であるベッドの上で、もちろんそこは自宅の寝室だ。
そしてまさに安眠と言っていい睡眠を終え、ゆっくりと目蓋を開けた目に光と一緒に入り込んできたのは・・・・不審者。
家の中だというのにフードを被って、手袋をして、全体的に黒に統一された姿が寝ている私に覆いかぶさるように手をついて見下ろしていたのだ。
どっからどう見ても不審者の現行直前の様な場面の目覚めに溜め息をついて横にある時計を見つめた。
8時半・・・。
「毎日ストーキングするだけじゃ飽き足らず不法侵入・・・。天下の大道寺のご子息も落ちた物ですね」
「千麻ちゃんがつれなくしてるんじゃん!!俺は普通に並んで歩いて話してキスしてエッチしたい健全男子だよ!」
「・・・・一方的なそれは一般的には【ストーカー】って言うらしいですよ」
「ねぇ、・・・馬鹿にしてるの?本気になれば今すぐにも犯しちゃえるんだよ?」
「・・・・・・」
「・・っ・・・しないけど・・・」
一向に退く気配のない彼に嫌味な言葉で非難すれば、日々焦らされて限界な彼が食ってかかる。
それでもじっと物申すような視線で牽制すると面白い程怯んで渋々勢いを下げていくのだ。
良くも悪くも過去の効果。
それにもう悲哀するでもなく、程よく効果を発するそれに満足して口の端を上げると体を起こした。
大きめのトレーナの更に伸びた首の部分が肌を滑って肩をあらわにする。
その部分にさらりと長い髪が揺れて、顔の邪魔になっていた束を耳にかけた。