夫婦ですが何か?





ーーーーONE DAYーーーー




不意に寄り添っていた熱が離れ、すかさず冷えた空気が入れ代わる様に肌に触れて意識の覚醒。


ぼんやりと思考可能になり始めた頭で最初に意識したのは肌寒さ。


次いで、ベッドの微妙な揺れ。


あっ、


と、意識し気がついた瞬間に自分のこめかみに、それは優しく落とされたキス。



「おはよう。・・・でも、まだ寝てていいよ」



聴覚も覚醒。


寝起きに優しい柔らかで甘やかす様な声の響きに体は従順だ。


言われるままにただ眠くて、下ろしたくないのに意思に反して目蓋は半開き。


それでも何とか気怠い体を僅かに起こしてままならない視界に彼を捉えてみる。


視力も影響しすぐには定まらずとも、じっと彼であろう塊を根気良く見つめピントを合わせれば。


私の現状が何やら愉快らしいグリーンアイが悪戯に揺れてクスクスと笑った。



「悔しいんでしょ?」


「・・・・はい、」


「あはは、こういう時だけは素直〜」


「・・・今日こそは・・って、・・・思ってたのに・・・」



彼が指摘したように、『また』っと思って眉根を寄せると。


すかさず私の額に伸びた彼の手が優しく押して私を再びベッドに沈めた。


もちろん、


クスクス笑いで。


『仕方ないなぁ』的に笑っての対応に、悔しくも思うのにやはり眠い。



「また、あなたより早く起きれなかった」


「別に早く起きる理由もないでしょ?」


「・・・朝ごはん、」


「いいから寝てなって。千麻ちゃんの鋼鉄な意思に反しても、まだ寝ていたい子がいるんだよ。・・・なぁ?【みずき】〜」


まるで寝るのを渋っている子供を諭すように私を眠りに誘うと、その唇を静かに僅かに存在を示し始めたお腹に寄せる。


触れた瞬間に熱いとも感じ、寒いとも感じた。


いや、肌寒いから彼の唇が熱く感じたんだ。


瞬時にブルッと小さく震えれば、すぐに理解した彼が羽毛布団で私の肌を包んで笑った。



「風邪ひくよ」


「・・・なら、寝る前にひかせる様な行為に誘わないで頂けますか?」


「いやぁ、愛しき奥さんと子供の存在を確かめて抱きしめたくて」



また馬鹿な言い訳を、


そう思ったのに言葉には出来ず。


開きかけていた唇はしっかり彼の唇に塞がれている。



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