夫婦ですが何か?





「やっぱり・・・千麻ちゃんの魔法には敵わないよ」


「私無しにあなたが独り立ちするなんて面白くないです。

『あなたには私が必要なんだ』

って己惚れて浸っているのが私は結構好きなんですよ」


「フフッ・・・・己惚れて。・・・大歓迎だし。

俺には千麻ちゃんが絶対的に必要です」



言いながら私の肩に頭を預けてきた彼に口の端を上げる。


そしてそのまま彼の肩にもブランケットをかけて身を寄せて。


必然。


肩からするりと動いた彼の頭、そのまま動作小さく私の唇に唇を重ねて呼吸の共有。


熱い息に甘くも苦くも感じる味が混じって変に印象深いキスに記憶されていき。


それを更に印象深くするような視界をちらつく白い雪。


しばらく柔らかいキスに興じて、静かに終止符を打ったのも彼の方。



「・・・・・メリークリスマス・・千麻ちゃん」



まだ近い位置で囁かれた言葉と唇が私の唇を悪戯に掠めてくすぐって。


そんな瞬間に思い出した事に意識して自分のお腹に指先を走らせた。


口の端を上げる。


少し悪戯に、意地悪に・・・。


この後の彼の反応を予想して。



「どうしたの?何か含みありそうに笑ってる」


「あなたに・・・もっと強烈な魔法をかけてあげようかと・・・」


「えっ、もう十分に俺幸せよ?これ以上の魔法は昇天するかも」



苦笑いでもどこか嬉しそうな表情向ける彼にそっと背伸びして、彼もそれに合わせてクスクス笑いながら体を傾け。


唇を触れるくらい彼の耳に寄せると、




「私達の可愛い【みずき】はね・・・・・」




そっと囁く・・・。


判明したばかりの性別を。


クリスマスに告げようと黙っていたそれ。


瞬時に驚愕と歓喜に満ちた表情で私を見つめた彼に、何も問われていないのに小さく頷いて見せて。


次の瞬間には彼の腕の中に強く優しく抱きしめられ・・・感じる。


まだまだ不完全だけれど小さく強まる夫婦の・・・家族の絆に。




「頑張るから・・・・一緒に補って作り上げていこうね・・千麻ちゃん」


「当然です。あなたには私の助けが不可欠だと一生思わせますからご心配なく」


「・・・・さすが・・・最高の奥様ですよ。

お前のママは最強で最高なんだよ・・・みずき・・・・」



そう言って彼が私の腹部に柔らかく指先で触れて。





あっ・・・。




感じたそれに口の端を上げる。




彼が触れた瞬間に、小さく胎動を感じたなんて・・・・内緒。


言いませんとも。


後で、寝る直前に静かに告げて・・・。


感極まった彼に抱きしめられて眠るんだから。


その為の【魔法】として今はそれを自分一人で噛みしめて。





きっと・・・明日も起きれない。


彼のぬくもりは何よりも私を眠りに誘うのだから。




彼の寝顔を見れないのは悔しいけれど・・・。




でも、・・・彼に柔らかく起こされる朝も悪くない。




そんな朝に思いを馳せて、どちらともなく再び甘くて苦い口づけを交わした。



そんな再婚初めてのクリスマス。













再婚でも・・・幸せですが・・何か?








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