夫婦ですが何か?
ーーーーONE NIGHTーーーー
通いなれたマンションの駐車場に車を停める。
もどかしいシートベルトを巻戻るより早く自ら除去し、勢いよくドアを開け地面を踏みしめると駆け出した。
走りながら電子ロックで施錠をして、鼻に付く雨の匂いに更に急かされる。
ああ、早く行かなくては。
そんな感情いっぱいにエレベーターを待って入れば耳に入るかなり大きめの雷の音。
あっ・・・。
瞬時に焦燥感強まり無駄だと分かっていながらボタンの連打。
特別その効果でもなくようやくその扉を開いたそこに乗り込むと、押しなれた数字をおしてすぐに閉を押していく。
ゆっくりと浮上する感覚に苛立ちさえ感じそうで。
ようやく到着音響き、厚い扉の隙間から外気を取り入れた瞬間にはその身を縫うように外に駆け出していた。
その途中ですでにポケットから合鍵を抜きだし。
扉の前に立った時には流れるような速さでそれを開錠。
そんな瞬間に鳴り響く雷鳴。
扉を開くのとほぼ同時。
「千麻ちゃーーー」
「遅いぃっっ!!」
開けて飛びこもうとした瞬間に、どうやら玄関で今か今かと待ち構えていた姿に逆にタックルされ後ろによろめく。
なんとか玄関扉に寄りかかる事で転倒は避けられたのが幸い。
ふぅっと息を吐いて安堵すれば次なる集中は・・・・。
俺の体にがっちり抱きついて震えているこのお方。
あーあ、
普段は絶対にこんな風に甘えることは滅多にないというのに。
だからこそ彼女には悪いと思いつつ、現状にラッキーと思って口の端を上げ、宥めるように彼女の頭を撫でてみる。
「遅くなってごめんね?・・・これでも超特急だったんだよ?」
「・・・っ・・さ、さっき・・・ちか、近かった・・・」
「大丈夫だよ、さすがにこのマンションに落ちたりはしないって・・・」
「か、雷舐めたらダメなんですって!!」
あ、ヤバいぞぉ・・・。
涙目・・・超可愛い。
恐怖からの怒りなのか勢いよくあげた顔はしかめっ面で必死なのに、その目はしっかり涙を浮かべていて。
あまりの愛くるしさにきつく抱きしめて口づけて盛ってしまいそうなくらい。
いや、
出来ないのは百も承知の未だ犯罪者の名残りしっかりなパーカースタイルなんだが。