夫婦ですが何か?





でも、冷静な自分も存在するから、今の無茶苦茶な自分の感情や反応に動揺して後ろめたくて。


それに巻き込まれているような何の落ち度もない彼。


最悪だ・・・。


なのに言葉で響くのは・・また・・・、




「どうせ・・・・ダメな・・母親ですよ・・・」


「・・・・千麻ちゃん、」


「どうせ、・・・ダメで嫌味で理解のない妻ですよ、」




ああ、完全に八つ当たりの被害妄想だ。


彼は何一つ攻撃性を出さずに、むしろ気遣って接してくれているというのに。


そんな折に再びお腹が張って、あまりに強くそれを感じた物だから摩りながら前のめりになってしまうと。



「ん?張ってる?大丈夫?とりあえず座ろうーー」


「大丈夫です!」



そっと覗き込んで背中に手を添えながら座る事を促してきた彼に、相も変わらず険悪な態度で叫んですぐに罪悪感。


驚いて双眸見開いた彼を捉えた瞬間に感情の決壊の様に涙が浮かんで頬に流れる。


一体何を一人で怒って、苛立って、自分勝手に八つ当たりまでして、揚句後悔の罪悪感で涙まで流しているんだろう。


自分でも呆れる自分の精神状態に、きっともっと彼は呆れているだろうと、それすらも悲哀の対象で。


接待なんて気を使う仕事の後の彼に、癒すでもなく理解不能な苛立ちばかりをぶつける自分に心底嫌悪もする。


そして追い打ちをかける張りの強いお腹にも不安が混ざって、がんじがらめで立ち尽くして流れる涙だけを必死で拭っていると。


ポンポンと頭の上を軽く撫でるように触れる彼の手。


擦った目をチラリと彼に走らせれば、さすがに怒っているかと思った表情はいまだ穏やかだ。


むしろ微笑みにも感じるそれに、今まで私が言った無茶苦茶な暴言は聞こえていなかったのかと疑問に思うほど。




「うん、うん・・・・、うん、・・・・分かった」


「・・・・」


「とりあえず・・・・ホットミルクでも作ってあげるから座ってて」


「・・・・・は・・い?」



そんな流れだった?


そう疑問に思っても、もうこれは決定事項だと言うように笑ってキッチンに向かう彼をただ見つめ。


それでも強い張りに立っているのも辛くなってきて言われたようにソファーに座った。


ゆっくりと息を吐いてお腹をさする。


出たがっているのだろうか?


まだ陣痛と言うほどの張ではないのだろうと理解し、安堵すると同時に不安にもなる。


それがまた苛立ちの原因にもなってくるというのに。


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