夫婦ですが何か?







「可愛い女の子でよろしく」



その言葉に呆れたような笑みで振り返り、無理を言うなと切り返そうとしたのに。


見透かすように絡んだ緑。


まるで予言でもしたような姿に、本気で女の子かもしれないとお腹に触れた。


だって、この人が口にする事は型破りでも大方実行されてしまう。


下手したら運でさえ動かすようなお人だ。


だからこそ言葉の変更。


口の端を上げると呆れの声ではなく、



「では・・・、可愛らしい名前を考えておかないと」



そう切り返して一礼。


フフッと笑う姿を確認して社長室を後にした。


カツンカツンと靴音響かせエレベーター前に立つとゆっくり振り返る。


前回はもう歩かないと思って振り返った。


でも今日は・・・。


きっと・・・・これからまた数えることも出来ない程往復するのだろうと予測して苦笑い。


そう遠くない。


この子が女の子であるという予測より確実に。


また・・・あの親子に振り回される日が来るのだ。


そんな事を思って今から寄ってしまいそうな眉根を摩ると、クスリと笑って静かに開いたエレベーターに乗り込んだ。





そんな彼には内緒の密会。





出産後初、お見舞いに来た義父は勝ち誇ったように笑うのだ。





「可愛い名前だね『翠姫』?」




「言い訳すれば・・・私が決めた名前じゃないですから」




相変わらず意地の悪い。


いつだって含みある笑みで人を翻弄して振り回して。


そんな人が再び義父になったのだ。


ああ、でも・・・・。


弱点発見。



なんて裏表のない砕けた笑みだろう。


優しく翠姫を抱き上げたこの人の笑顔と言ったら・・・。


どうやら人を悪戯に翻弄する黒豹も孫にはその性分を発揮できないらしい。


黒豹を翻弄する我が子は強者だと心で思って小さく笑った。








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