夫婦ですが何か?
「本当に・・・性格もお子様なら味覚もお子様ですね」
「だって・・・辛いんだもん、涙目になるし・・・」
「キムチ鍋とかも食べたいです。ナシゴレンも・・・」
「唐辛子抜きなら・・・・」
「キムチの唐辛子抜きはただの漬物、ナシゴレンから唐辛子抜いたらアジア的炒飯でしょう」
「お、俺のいないランチタイムとか・・・」
「・・・・正直自分だけの為に手間かけるの嫌いです」
面倒だと言い捨て甘口カレーを不愉快顔で口に運ぶ彼女を、同じくカレーを口に運びながらにやけそうな口元を必死に耐える。
いや、今の発言、自分に手間かけないって言う点では『ちゃんと食べてるのか?』と問いただしたくもなるのだけど。
でも、もっと重要なのは・・・。
俺と食べる食事には手間かけてくれてるって事ね。
確かに、甘口と言えど辛くない香辛料で深みのあるルウだと思う。
きっと同じものは俺には作れなくて、彼女なりにスパイスを配合しての力作だろう。
肉も煮込まれて対して歯を立てなくてもほどけるほどで。
カレー一つでパーフェクト。
彼女がどんなに不満な表情をしようと愛情しか伝わってこないと思うのは俺の都合良しなんだろうか?
「ねぇ、ねぇ、今度カレーの人参さぁ・・」
「浮れたハート抜きなんかしませんよ」
「何で分かるのさ・・・。はっ!すでに以心伝心だよね!?」
「あなたの浮れた新婚理想なんて分かりやすすぎてうんざりします」
「じゃあせめてオムライスのケチャップで、」
「【Kill】とでも書きましょうか?」
「いや・・・いい。俺が千麻ちゃんのに【LOVE】って書いて満足しとく」
「・・・・想像しただけで食べる気失せそうですね」
「酷い!!しかもそんな思いっきり嫌悪の表情で想像しないで!?」
うーん、相変わらず・・・。
夫婦漫才の相方はドライで甘くは乗ってくれない。
再婚だろうと今度は一から愛情あっての結婚なんだし、もうちょっと甘いムードで接してくれてもいいのになぁ。と常々思う。
彼女の揺るがないスタイルは秘書時代からそのままで、こうして結婚した今も敬語だし・・・。
自分から絡んでくることはほとんどない。
少し・・・物足りない。
「千麻ちゃん・・・」
「・・っ・・何ですか?」
「いや・・あのさ・・・」
「はい?・・今ちょっと忙しいんですけど!?」
「うん・・・いや、その【忙しい】内容に突っ込みどころ満載なんだけど・・・」
「あっ・・・ほら、そっち行きました!!」
「・・・・妊婦がするゲームじゃないよね?」
そう言いながら促されたままに向かってくるゾンビを難なく打ち殺すと深い溜め息をつく。