夫婦ですが何か?




契約婚して、紆余曲折・・・離婚して、口説いて、口説いて・・・。


口説き落としても長いリハビリ。


そうやって必死に求めて引き寄せて、


順番は多少置き間違えたけど、子供が出来て再婚した。


そして今こうしてこのマンションに彼女の気配を取り戻して1ヶ月。



「・・・・新婚・・・最高です」


「アホですか?一度なされた事を繰り返すのは【新】とは言いません」


「いいの。要は気持ちの問題です。俺の中では激しく今が熱い新婚モードで、むしろ何故玄関先で『おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・』みたいな流れがないのか不満なくらい」


「・・・・・『おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それともカレー?』」


「・・・・それ結局食事に戻ってるよね?それで行くなら3択全部千麻ちゃんでもいいのに」


「絶賛妊娠中なので」



さらりと真顔で言い切ると鬱陶しいとばかりに俺の胸を押し返し元いたキッチンに戻り始める姿。


名残惜しくも自分も着替えるべきだと渋々寝室のクローゼットに向かい、堅苦しいスーツから楽なルームウェアに装いを変えて。


そうしてリビングに戻ればすでにテーブルに並べられた今夜の食事。


扉を開けた瞬間から詳細明確であったカレーがメインの本日の夕飯。


俺的に大好物です。


でも・・・俺的に大好物な物に彼女はかなり不満おありでしょうが・・・。


今日も言われるであろう不満を覚悟して席につくと、冷蔵庫に冷やしてあったサラダを手に遅れて席につく彼女。


向かい側に座ってお互いに空気を合わせると手も合わせて、



『いただきます』



程よく重なった声に満足し、誘惑強い香りを漂わせるカレーを一口食べて満足に微笑む。



「美味しい」


「・・・・甘い・・」



ああ、来た来た来た・・・。


思わず苦笑いの唇にスプーンを当てて、一口食べた直後から眉根を寄せる彼女のご機嫌伺い。


そうして吐きだされる溜め息と、非難するように絡んできた眼差し。



「・・・・美味しい・・です」


「・・・・甘いです」


「・・・・・・辛いの苦手でごめんなさい」


「スパイシーなインドカレーが食べたい・・・」



そして再度吐きだされる深い深い溜め息に、美味しくて嬉しいのに感情のままに浮れることのできない悲しさ。


俺の味覚に合わせた甘口カレーはいつだって彼女の不満の対象だ。


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