夫婦ですが何か?
ーーーONE NIGHTーーー
「千麻ちゃん・・・」
「はい、何でしょう?」
「チラチラ垣間見える黒いパンツに誘惑されてるんですけど」
その言葉に反応し視線を落とすと見上げる姿が眉尻下げてニッと笑う。
そして非難してくるくせに私の太ももにその指を絡めピトッと頬を密着する仕草に溜め息。
「セクハラです。も、言い飽きました」
「だってセクハラじゃないじゃん。夫婦のこれはスキンシップだよ」
「鬱陶しい・・・」
「だって、千麻ちゃんが誘惑するんじゃん。そんな椅子使ってまで背伸びして・・・」
「・・・・あなたが突然鴨鍋食べたいとか言い出すから、食器棚の一番上のよりによって奥にある鍋を取ろうと頑張ってるのが誘惑だと?」
そう説明をすれば今言ったとおりに夕飯に鍋をしようと準備していたところで、必須アイテムの鍋の在所を確認すれば低身長な私には到底その手及ばぬ食器棚の一番上。
仕方なしにダイニングから椅子を持ち出しその上に乗って、奥に仕舞い込まれているそれに手を伸ばしていれば、馬鹿で単純な夫が釣れたってわけだ。
確かに部屋着に彼のパーカー一枚。
背伸びなんかすればチラチラ下着が覗くのは自分でも理解している。
それでも・・・、いまさらパンチラに釣られるなよ。
しかしこの夫の思考ではまさに私が鴨葱なんだろうか?
「・・・・今この手が滑って鍋が直撃しても、事故って事で解決できますよね」
「千麻ちゃん・・・、なんか本当に俺に殺意持ってないよね?」
「あなたが馬鹿な真似さえしなければ」
「馬鹿な真似?・・・・たとえばーーー」
発情期・・・。
含みありに微笑んだかと思えば頬を密着させていた部分に唇で触れチュッと音を響かせる。
引き寄せる為なのかするりとさっきより巻き付いてきた指先が太ももの内側まで回った。
でも特に焦るでもなくあきれた溜め息を漏らしながら、やけに新鮮な上からの角度で美麗な夫を見つめた。
「・・・これは、馬鹿な真似?」
「どうでしょう?あまりに幼稚すぎた挑発で怒るに値するかわかりません」
表情を変えるでもなく淡々と言い切れば、ふーん。と少しつまらなそうに上目づかいで見つめてくるグリーンアイ。
さぁ、そろそろ本気で離せ。と促そうと口を開けば、次の瞬間さすがに驚愕で双眸を見開いた。