夫婦ですが何か?
トンと、膝の裏に与えられた衝撃。
不意を打たれたそれに見事体が崩れ落ちて、「あっ、」と思ったときには椅子からも落ちる。
それでも直後に感じたのは床への衝撃じゃない。
どさりと衝撃を緩衝した不思議な感覚に一瞬目を瞬かせて、でもすぐに状況を理解すると非難するように眉根を寄せた。
そして今まで見下ろす対象であった彼をきつく睨み上げる。
当然返されるのはしてやったりな笑み。
悲しいかな不本意にも彼の腕に抱かれている現状。
「ふふ、じゃあ、これは馬鹿な真似?」
「そうですねいっそ鴨と一緒にさばいてやりたいくらいに」
「俺は余すとこなく千麻ちゃんをさばいて食べちゃいたい」
また馬鹿なことを。
そう思った瞬間にはさらに下降し体に与えられる微妙な浮遊感。
それでも一瞬。
一瞬の後の体の違和感は背中にぴったり得る床の感触。
そして視覚を命一杯その印象を映す彼の姿。
どこか妖艶に、持ち合わせた綺麗なグリーンアイで誘惑し見下ろす。
まぁ、・・・今さら誘惑もされませんが。
「・・・・ねぇ、見下ろす俺と見下ろしてくる俺・・・どっちが千麻ちゃん好み?」
「・・・・どっちも幼稚で馬鹿な男にしか、」
「幼稚・・・ね。でも・・・子供は子作りなんて出来ないもんねぇ?」
ニッと口の端を上げながらその指先が太ももから滑り、私の服の中に入り込みながらゆっくりめくり上げてくる。
徐々に外気に触れる肌に彼の欲求不満の度合いを感じて小さく息を吐く。
そろそろ末期か?
やれやれと思ったときには胸の上まで押し上げられていた服。
そして仰向けに寝てしまえばその膨らみなんて皆無の胸の谷間にそっと触れてくる唇。
私の反応を伺うようにそっと触れ離れ一度視線を絡ませると、ニッとグリーンアイを細め再びしっかり唇を押し当てた。
「・・・・ダーリン、」
「・・・はい?」
「出直し」
「・・・・・」
「まったくもってその気にならない。・・・・勉強不足ねダーリン」
「っ・・・・」
フッと口の端を上げて方眉を上げる。
言葉と表情に簡単に不意を突かれ隙のできた彼の胸ぐらを掴むと勢いと力で横に倒し、ぐるりと視点の180度切り替え。
予測していなかった彼を押し倒すなんて案外楽なもの。