手品師
見ないようにして通り過ぎるハズが、好奇心に負けて、チラッとおじいさんの方を見てしまった。

「!?」

おじいさんは、行き倒れじゃなかった。
ホームレスでもない。

遠目では判らなかったけど、おじいさんの足元には、小さな空き缶と、ワケの判らない品物がいくつか置いてある。

露天商?

でも、それにしては品物がヘンだ。
値段だって書いてない。

僕はつい立ち止まって、おじいさんの方を見てしまっていた。

ふと気付くと、おじいさんも僕の方を見てる。

「ぼうや、見ていくかい?」
ぼうやって…僕はもう14歳だぞ!

僕はムッとして
「学校に遅れるから」
と答えると、足早に通り抜けて行った。
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