不純な理由で近づきました。



「む、無理とかじゃなくてね。
恭くんは大丈夫だから、カインくんも平気かなって思って」



だからそのお姉さんたちも大丈夫だろう、なんて思ったのだけど。


ちょっと、怖い気持ちはそれはある。


でも、いつまでもこんなことで怖がるなんて嫌なの。


ちゃんと、辛い過去とだって向き合って強くなりたい。



「だから、手……大丈夫。外して下さい」


「……分かった」



はぁ、というため息が耳に届く。


少し、我が儘だったかもしれない。


恭くんはわたしを心配してこそいろいろ言ってくれたのに……呆れられたかな。



「でも、怖くなったらすぐ言えよ」


「はいです」



真剣に心配してくれる声。


呆れていないみたいで少し嬉しくなってしまう。



そっと視界を塞いでいた温もりが消えて、光が目に入った。


ドキドキと、緊張で忙しなく動く心臓。


やっぱりちょっと怖くて、思わず恭くんの服の裾を掴んでしまった。


でも、あのときみたいに心の中全てが恐怖で染まっているわけではない。



「大丈夫か?」



心配そうに顔を覗いてくる恭くん


その瞳を見つめてわたしは頷いた。



「あのー、二人の世界に入ってるとこ悪いんだけど、」



あ、とカインくんの言葉に固まる恭くんとわたし。



「この状況、説明してくれると助かるかなー……なんて」



………で、ですよねー。


と、わたしは思わず苦笑をもらした。






< 107 / 257 >

この作品をシェア

pagetop