不純な理由で近づきました。




「あ、星も綺麗ですよ」


「ほんとだ」



今まで庭にばかり目がいっていたけど、上を見れば満天の星空が広がっていて。


月明かりもないからか、余計に星が輝いて見える。


こんなにのんびりと星を見たのなんて久しぶりで、思わず見入ってしまう。



「そろそろ中に戻ろっか。
夏とはいえ、湯冷めしちゃうといけないからね」


「そうですね」



もっと星を見ていたい気持ちもあるけど、せっかくの旅行。


風邪なんて引いてしまったら元も子もない。


わたしはカインくんのあとを追うように旅館に向かった。



「じゃあまた明日」


「はい。おやすみなさい」



エレベーターで上に行くカインくんを見送り、わたしも部屋に戻ろうと足を動かす。


でも、



「あ、綺麗……」



歩いていると、さっきまでカインくんといっしょにいた庭が上から見ることができて。


その美しさに思わず足を止めた。



庭にいたときは気がつかなかったけど、上から見るとこうなってたんだ……


ちゃんと上からでも綺麗に設計されているような木や道。


この感じ、兄さんが好きそうだな、とつい笑みがこぼれた。






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