不純な理由で近づきました。
チョキチョキと鋏の入る音が静かな空間に落ちる。どんな風になるのかなと思うと少しドキドキする。こういう気持ちも久しぶりだな。
いつもは髪とか気にしなかったし、前髪に至ってはワクワクするとかのドキドキじゃなくてどっちかというとハラハラしてたというか、不安要素が大きかったから。
目を瞑ったままじっとしているとサラリと前髪が額を撫でてナルちゃんの「終わったよー」という声が。
ドキドキしながらそっと目を開けると視界がいつもより広くてそわそわした。
「はい鏡ー」
「あ、ありがと…うわ、」
思わず鏡を覗き込んでまじまじと見てしまう。長かった前髪が眉毛の辺りで切り揃えられていて自分と目がしっかり合った。
「ふふ、りっちゃんの顏がよく見えるようになったでしょー?」
「う、ん…でもちょっと恥ずかしいかも」
要望通り後ろはあまり変わってなかったけど、それでも少しだけ短くなったかな。
心がそわそわしながら髪をいじっていると玄関の方から兄さんの声が聞こえた。思ったよりも早く帰ってこれたみたい。
いつのまにか片付け終わっていたナルちゃんと一緒に兄さんのもとに向かう。