嘘を重ねて。



「…今の人って彼氏?」


縦にも横にも振れない首
息がどんどん苦しくなっていくのを感じる


「昨日の事が心配で来てみたけど、どうやらーーー」



“言わないで”



「…必要なかったみたいだな?」



聞きたくなかったこの言葉

止めようとするも虚しく声にはならず
代わりに涙として零れ落ちた


何故泣いているのか
自分でもわからなかった

わからないけど
悲しくて涙が溢れた


「…じゃ。」


「…っ」



去っていく背中に
私は嗚咽でしか返す事が出来ない


やっと見つけた唯一の居場所で出会った
私の暗い毎日を明るくしてくれた翔琉


そんな存在を失う事になるなんて…。


でもその原因を蒔いたのは
他でもない私なのだ


ーーーーーーーーーーー


毒から逃れたい一心で
縋ったのは甘い甘い薬…

快楽に身を委ねて
私はさらに溺れていく


それでも所詮は薬
効力が切れればまた
毒から逃れるように甘さを求める

結局、甘さを求めすぎた私は
その依存心で自分をさらに毒へと侵した…。




《甘さは時に毒になる。》








< 37 / 116 >

この作品をシェア

pagetop