ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


何とかスパイ疑惑を晴らせそうだと安心した時、

白衣の彼が、なぜか“夏美”自慢をし始めた。




「盗みは許せないが、夏美に目をつけたことだけは褒めてやろう。


夏美は俺が今まで作った試作品526種の中で、一番イイ女だ。


暑い夏にピッタリの、クリアな喉越し。キレッキレの爽やかさだ。


いいか?このキレを作るには、……――――」





夏美の特徴や、ホップや麦芽の配合率、

製造方法までペラペラと喋り出した彼。


その表情は恍惚として、私に説明しているというより、

ただ今、自己陶酔中といった感じ。



床に座ったまま口を半開きにして、彼の話を聞いていた。



新ビール“夏美”について、私が大まかに理解してしまってから、

三国主任がやっと、待ったをかけた。




「久遠(クオン)!

部外者に夏美の全てを暴露して、
どうするんだよ!」




はい、まったくその通りでございます。



私はスパイではないが、本当にスパイなら、

「情報ありがとう」と、お礼を言わねばならないところだ。



< 11 / 453 >

この作品をシェア

pagetop