ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


美味しく食べていたはずのすき焼き定食が、何だか急に味気なくなってしまった。



つまみ上げた牛肉を、溜息と共にお皿に戻す。



その時、私のポケットでスマホが震えた。



入会した結婚相談所からの電話だった。



社食は賑やかで、私に注目している人も聞き耳を立てている人もいなかった。



それを確認してから、その場で通話に出た。




『田丸夏美様のお電話で宜しいでしょうか?

こちらは株式会社ワンダフルパートナーエイジェントでございます。

いつもご利用いただきまして――』




長い前置きの後に、用件が告げられた。


それはお見合いパーティーに関することだった。



気に入った男性がいたかと聞かれ、

「残念ながら……」と正直に答えた。



私がそう答えるのを分かっていたかのように、

相談員の女性は、他に紹介したい男性がいると言ってきた。



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