ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
彼が何を言っているのか、サッパリ分からなかった。
“スパイ”と言われた気がしたが、一体何のスパイ容疑をかけられているのだろう?
会議室の前で立ち聞きしてしまったのは事実だけど、
その話の内容は、夏美ちゃんにイケナイことをしている、オオカミ達の下品なトーク。
詰問されるような、高尚な話は聞いていない。
頭の中は疑問符だらけで、問い詰められても答えられなかった。
ポカンとアホ面をさらすだけの私に、白衣のイケメンは苛立った。
「だからお前は、俺らの開発した新ビールの情報を盗みに来たんだろ?
“夏美”は、来年夏に売り出す新ビールの試作品。
次のプレゼン大会に出品する予定だ。
今日やっと完成して試飲にこぎつけたばかりなのに、早速盗みに来やがって……。
お前の開発チームがどこなのか、
白状しろって言ってんだよ!」