君から好きを引き出す方法

熱の夜










時計を確認しては自分の無意識の行動に腹が立って舌打ちする。


しかもそれが10分単位で頻繁にしていた事実にも苛立ちが募る。


これじゃあ・・・。


自分のあり得ない行動に眉根を寄せて椅子に座ると、昨日の出来事を思い出して視線を走らせた。



レジカウンターに置いてあるコサージュをただ見つめて昨日の失言について考える。



いや、私はどちらかと言うと被害者な筈。


ストーカー被害にあった被害者が加害者に対してキレただけ。


何もおかしくないのに心が痛むのはこのコサージュのせいなんだ。


散々非道な行為をしてきて私が存在を否定するような言動を言った後に甘い行為を置いていく。






これはあいつの作戦なんだ。


絶対!!






だまされたら痛い目をみるに決まってる。


なのに気になるのはあいつが悲しげな笑顔で絶妙な甘さを置いていったから。





ああ、



もう、



やっぱあいつ嫌いだ。






悩む頭のままコサージュを手にすると、それ自体が悪の元凶であるかのように睨みつけてしまった。


くそ~、可愛いなぁ。


どこから見ても非の打ちどころがない可愛さにすら八つ当たりで矛盾した苛立ちを向けてストレスを何とか逃してみる。






玄は昊さん達とブライダル関係の仕事をしているらしい。


その中でブーケやヘアアクセサリーなどの担当を玄がしているらしく。


あの感じの悪い男がブーケなんかを作る姿は想像しにくい。




でも・・・。



悔しいかなこのコサージュは可愛らしくて一目で気に入ってしまったりして。


ケーキだって結局美味しく頂いて、だからこそ後ろめたいじゃない。

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