君から好きを引き出す方法
自分には理解出来ない世界を経て、親友は白ドレスを身に纏い見目麗しい旦那様の隣で微笑んでいる。
そんな姿を見つめていれば、気がついた海里が軽く手を振り笑ってくる。
ふっ、やっぱり海里は可愛らしい。
思わず口の端を上げ同じ様に手を振り返す。
主役である彼女はあまり自由に身動き出来ず、申し訳なさそうに視線を外して他の来客に挨拶している。
特にそれに不満はなく、親友の晴れ姿を見れた事に満足して壁に寄りかかると不意に耳に入り込んだ【黄色い声】的な物で視線を移した。
ああ、見事に囲まれて・・・。
捉えた瞬間に呆れた表情になっていたかもしれない。
主役を差し置いてバカみたいに煌びやかにその身を彩る何人かの女。
年齢的に自分より上なその人達はきっと親友の旦那様の職場の人なんだと理解する。
ここにも結婚式を合コン会場と勘違いした女達がいるわけね。
馬鹿らしいと冷めた視線でその騒ぎを眺めていれば、ハイエナに囲まれた中心人物を視界に捉えて眉根を寄せる。
どこか記憶のある顔なんだけど・・・。
「あっ・・・」
気がついた事実に納得して更に呆れた眼差しで見つめてしまう。
これは、私の偏見以上の人かもしれない。
発情期か?と、問いたくなる女達に囲まれて、困るどころか胡散臭い微笑みで全てに対処していくその人物にもう一度視線を走らせる。
うん、間違いない。
海里がよく話にだしていたあの人だ。
容姿端麗なあの容姿をそうそう忘れる筈もなく、だけども決して心惹かれる事はなさそうな私が苦手とするタイプ。
絶対に関わり合いたくない。
そう結論出すと視線を外してグラスの中身を口に運んだ。
それでも耳障りな女の声も気になって、再びチラリと不機嫌に視線を走らせると。
捉えてしまったのはほんの一瞬、彼が見せたウンザリとした笑顔。
ああ、きっと・・・・こっちが本音なのか。
そう理解しても同情は出来ず、むしろあからさまに出せば周りの子達も期待せずに離れていくだろうに。
結局はいけすかない、と視線を外して存在を忘れる事にする。
ごくりと喉を潤せば必然的にグラスの中身も減っていき、中のカラフルなそれが半分以下になったそのタイミングでその最悪的な事態は起きてしまった。