君から好きを引き出す方法
賑やかなパーティ会場で賑わう人々を見つめ、持っていたグラスの中のアルコールを口にする。
瞬時に広がる甘さとほろ酔い。
喉元からじりっと熱くなる感覚が心地よく、素直に美味しいと賞賛した。
「あの~、」
気を抜いた瞬間の呼びかけに、「またか」と心で不満を呟き、顔を上げれば絡むであろう視線はグラスから外さない。
そんな頑なな態度を確認すれば、大抵の人間は私という可愛げのない存在に諦めてみずから離れていくものなんだ。
「えっと、海里ちゃんの友達だよね?」
「・・・」
「ねぇ、なんで1人?もしだったら一緒に話しながら飲まない?」
「・・・」
「・・・」
私が見事その存在を拒めば、相手は苦笑いを浮かべ何か誤魔化しながら静かに離れて姿を消した。
気配が消えた自分を害する存在にようやく安堵して小さく息を吐く。
だけど馬鹿正直な内心が尋常じゃない位早く心臓を鳴り響かせ、自分がいかに緊張していたかを物語った。
心臓・・・煩い。
いっそとまれ!
頭にまで響くそれは隠している自分の本心。
さらりとクールに一人で壁の花を装っていると周りは思っているのだろうか?
でも現実は・・・。
あり得ない。
なんで結婚式がナンパ会場化してるのよ!?
普通に主役の幸せを祝っててよ!
暴れる心臓を宥めるように再び手にしていたアルコールを口に運ぶ。
視線を走らせれば今日の主役である親友の華やかな姿を捉えて胸が熱くなる。
容姿端麗な親友は外国の血が混じったグリーンアイの美少女で、私の数少ない友人の1人。
見た目だけで言えば美麗なアンティークドールの様なのに口を開けばかなりキツイ性格の彼女。
瀬尾 海里(せお かいり)
ああ、今はすでに 大道寺 海里 だった。と、自ら訂正。
この親友というのもなかなか面白い経緯で今隣に並ぶ旦那様と知り合い結婚したわけで。
元は親の再婚で連れ子同士の義兄妹になるところをまさかの2人で一目惚れの後に【駆け落ち】。
色々と常識では考えられない様な出来事を経て見事入籍&妊娠をし、1人娘が1歳になったこの時期にレストランウェディングとして結婚式をしているんだ。