小悪魔的な彼と悲観的な彼女


「……もう、カッコつけてる場合じゃないからね」

「…え?」


そして意を決したかのように、その顔を上げる。


「それですみれさんと居られるなら、隠してた事全部話すよ。隠してた事は…あるんだ。でも今まで嘘をついた事は無いし、これから話す事も本当に全部真実…それは信じてくれる?」

「……信じたいとは、思ってるよ」

「…うん、ありがとう」


信じたいけど信じられるとは言い切れない、そんな私の装う事の無い言葉に、拓也君は微笑んで見せた。

そして、じゃあ…と、拓也君は真実へ続くはずのその口を、そっと開く。


「僕がここに越して来たのは、ちょうど大学に入学する頃。だから6年前…ぐらいかな。それですみれさんの事を知ったのも大体それくらいの時」

「…え?」


私の事を、知った?


「え、でもあの時私と初対面だって、」

「うん。ちゃんとしたすみれさんと対面出来たのはあの時が初めて。それまでは…まぁ順を追って説明するよ」


そう言って少し困ったように微笑む拓也君に、私は口をつぐんだけれど…対面したのが初めて、だから初対面って…なんだか少し不思議な言い方だなぁとも思う。

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