201号室の、オオカミくん☆


「さっき葵は此処に居るか?っておじさんが下に居たよ」

私の言葉に、ピタリと葵の手が止まる。

「葉瀬川さんとかいうセクシーなおじさんが」


パサリと髪を纏めようとしていたはずの葵の手から力が抜けていく。

「――葉瀬川さんだけ?」

渇いてポロポロ剥がれ落ちたような、カラカラの声だった。


「うん。おじさんだけ」


岳リン?とか言う人は帰っていったし。


はぁーっと葵は息を吐くと両足を伸ばして肩の力を抜いた。


「おじさんだけなら良いよ。あの人、分家だし」


気を取り直して髪を結ぶと、夜色のエプロンも付けだした。

分家ねぇ。
色々大変なようだけど深く聞かない方が良いのかもしれない。


「あんた家出中なの?」
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