201号室の、オオカミくん☆
「……いや、ほら」
口ごもる皇汰に代わり、私を降ろしながら葵が尋ねてきた。
「結愛はお婆さんと二人暮らしなの? この前の覗き野郎の時にお母さんの話はしてたけど」
……ああ。
なるほど。私は二人の話に首は突っ込んでも、何も話してなかった。
「お父さんは私が生まれる前に交通事故、お母さんは中学に上がる前に病気で。それからはずっとおばあちゃんと二人だよ」
なるべくたこ焼きパンが美味しくなくならないように気をつけて発言する。
「だから、せっかく生きてるんだから分かりあえないのは寂しいなとは思うけど、親も人間だしねー」
ははっと笑うが二人は笑わなかった。
気まずくなるからあまり言いたくなかったのに。
「たこ焼きパン食べる?」
1つしかないたこ焼きパンを葵に差し出した。