倦怠期です!
あぁ、やっぱり石ノ森のケーキはおいしい・・・!
と思いつつ、コーヒーを一口飲んだ私に、「すずは?まだ好きな男はできないのか?」と水沢さんが聞いてきた。

「ぶっ、ちょ・・ちょっと。コーヒー飲んでる最中に、ごほっ。そういう質問をふらないでっ!」

あぁもう。危うくコーヒーを吹き出しそうになってしまったじゃないの!

「すず、大丈夫か?」と言いながら、背中を優しくトントンと叩いてくれてる有澤さんに、「大丈夫」と返事をすると、有澤さんは手を止めた。

「いません。いっつも喧嘩ばかりしてた両親を見てきたからか、私は恋愛にも結婚にも興味ないの」
「でも姉ちゃんには彼いるじゃん」
「う」
「それにすずは因幡さんと仲いいって、有澤思わない?」
「・・・思う」
「なっ・・・因幡さんとはそんなんじゃないもん!因幡さんは、仕事に慣れてない私を気遣ってくれる優しいお兄ちゃんみたいな人で・・・。それに因幡さんにはカノジョいるし」

あぁ。必死に弁解してる自分の顔が、赤くなってる気がする。

「別にいいじゃん。って二股を推奨してるわけじゃなくて。好きなら好きでいいじゃん。バレンタインにかこつけて、コクったら?」
「そんなことしません!でも・・・チョコ、あげたほうがいいと思う?」

私は、救いを求めるように、有澤さんの顔を見た。

「なぜ俺に聞く!」
「だって。同じ産業部だからその・・・日頃お世話になってる産業部の人たちには、バレンタインに何かあげたほうがいいのかなーって」

手をもじもじさせながら言う私に、水沢さんは「あぁ、なるほどー」と言いながら頷いた。

「でも彼女さんいる人に、義理でもチョコあげていいのかなって・・・分かんなくて」
「難しく考える必要ないだろ」
「・・・私には難しいもん」
「なら倉本さんに聞いてみ。あの人が義理チョコ配ってるんだったら、共同であげりゃーいいじゃん」
「あ、そっか!そうだね!」

まるで先行く道に光が照らされたような感じがするくらい、有澤さんのアドバイスは、ありがたかった。

「有澤さんっ!どうもありがとう!」
「わーったから俺を拝むな!」
「有澤地蔵」

水沢さんの呟きに、3人でまたゲラゲラ笑った。
その時の私は、「ホント、仲の良い同期に出会えて幸せ者だ」と思っていた。


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