倦怠期です!
それから15年。
私の同期だった11人のうち、まだタハラに勤めているのは、たったの3人。
その中にはもちろん仁さんもいるし、水沢さんもいる。
水沢さんは今、公共部で課長をしているそうだ。
石ノ森製菓堂でバイトをしていた彼女さんとは、残念ながら別れたけど、結婚して子どもが二人いる。

そして私を入れた女子5人は全員、寿退職している。
でき婚に至っては、私を筆頭に、その翌年には千葉支店にいた牧さんと、大阪支店の室井さんもしているけど、同期同士で結婚したのは、仁さんと私だけだ。

退職したのは、何も私たちの同期だけではない。
私たちが入籍して5ヶ月後、冷熱1課の戸田さんが結婚した。
お相手は、ジュリアナ東京で知り合ったという、読者モデルの「ゆりちゃん」で、彼らは知り合ってからすぐ同棲していたのは、私も知っていた。
「別に結婚する気はなかったし、有澤たちができ婚したのに触発されて」、ジューンブライド、みたいな・・・。

そういうノリだったからなのか。
戸田さんは2年後に離婚して、すぐにタハラを退職した。

同じく冷熱1課の因幡さんは、私たちが入籍をして翌年の秋に、長年つき合っていたナースのカノジョと、ついに結婚した。
こちらは私たちに触発されたわけでもなく、最近髪が薄くなったことを気にしていた因幡さんに、彼女さんは「それでも一緒にいたい」と言ったことが大きなポイントだったと仁さんから聞いたけど・・・。
どこまでが本当なのか、退職後、タハラのみなさんには全然会ってない私には分からない。
そんな因幡さんは、今ではタハラの東京本社で部長職に就いている。

因幡さんの同期で、仁さんの先輩だった施設1課の小沢さんは、実は、タハラの産業部顧客の、とある会社の社長の息子で、そのツテでタハラに入社していたそうだ。
そして小沢さんは、その会社を継ぐべく、今から8年程前に退職した。
その前年に、公共部で事務をしていた田中めぐみさんと結婚したとのこと。

仁さんとは一応独身寮で同部屋、ということになっていた、医療1課の仙崎さんは、私が退職した翌年、すでに同棲していた仙崎さんの同期で、東京本社・社長室の成瀬さんと結婚。
それを機に、二人ともタハラを退職した。

私の母と同い年だった倉本さんは、4年前の60歳で定年退職された。
倉本さんと同い年だった、公共部のもう一人の田中ちづるさんも、定年までお勤めされたそうだ。
ちなみにタハラでは、女性の定年は60歳、男性の定年は65歳で、役員クラスになると、定年は75歳になるらしい。

倉本さんたちだけじゃなく、営業のみなさんの中にも、定年を迎えて退職された方、小沢さんのように家業を継ぐために退職された方、仙崎さんや戸田さんのように、転職するために退職された方もいらっしゃるし、亡くなった方もいらっしゃる。
その中には、私と同じくらいの、まだ40代前半の方もいらっしゃって・・・。
「え!?まだ若いのに」と思わずにはいられない。

当時60代、70代だった役員クラスの方々は、亡くなったり、病気で引退されたりで、15年の間に全員変わっている。
私の入社面接をしてくれた中島常務は、3年前に亡くなった。


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