倦怠期です!
とにかく、夫の方から「出かけよう」誘っておきながら、ドタキャンになったケースは、今まで結構あったと言ってもいい。
というより、夫から「出かけよう」と誘ってくるのが大半だから、ドタキャンされると、正直腹が立つのよね。

でもこれは、夫と私の二人だけで出かけようとした時の場合。
日香里のピアノの発表会に行くとか、遼太郎のバスケの試合を見に行くとか、子どもたちも一緒にお母さんちへ行くとか、私たち以外の誰かも一緒に出かける場合、夫の体調不良諸々が原因で、出かけるのがダメになることは、ほとんどない。
だから夫が「私に関することは肝心なときにヘマやらかす」のは、私も納得だ。

「そう嘆いたところで、あなたの体調が完全に良くなるわけでもないんだし。キャンセル料って言っても100パーセント払うわけでもないんだし」
「そやな。むしろ無料の1泊券もらえるんや。これ得したんちゃうか?」

と言う夫は、大学の4年間だけ神戸に住んでいて、それ以前は、広島・岡山・長崎・鹿児島・福岡と、西と南の方に住んでいた。
大学卒業後、タハラの横浜支店に就職が決まったのを機に、ずっと神奈川に住んでいるけど、20年以上経った今も、ふとした時に、関西弁が出ることがある。
関西弁だけじゃなくて、九州弁と思われる方言も出る時があるんだけど、関西弁のほうがアクセントが違う分、分かりやすいような気がする。

そして生まれてから40年、ずっと神奈川に住んでいる私は、結婚して20年経った今も変わらず、仁さんの関西弁を聞くと、なぜか心がほっこりする。

でも今の私は、そんな気持ちを極力顔に出す気分じゃなかった。
むしろ、「ちょっとあんた。熱あるくせにどこまで短絡なポジティブ思考なのよ!」と夫に突っかかりたい気分。
過去幾度かデートがドタキャンになったたびに、「期待するのはやめよう、じゃないとその分落ち込んじゃうから」と自分に言い聞かせて。
いつの間にかそれが私の教訓になったのに・・・。
やっぱり私、このデートに期待してたんだよね。
ていうか、デートでも何でも、仁さんと一緒なら、期待がゼロになるなんてありえないもん。
だって私は、仁さんのことが好きだから。
たとえ仁さんが浮気してても。

おセンチな気分がドッと押し寄せてきた私は、つい泣きそうになってしまった。

・・・今はダメ。
仁さんが寝てから、この部屋を出て、そして・・・まだおセンチな気分に浸ってたら、泣くことにしよう。
幸い日香里も遼太郎も出かけているから、一人も同然だ。

そのとき手の上に何か感じてハッとした私は、ビクッとしながら手を見ると、私の手の上に、夫の手が重ね置かれていた。


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