倦怠期です!
「ぎゃっ!ちょちょ、ちょっと!私、重いから!」
「そのセリフ、久々聞いたー」
「私、20年前より10キロは太ったのよ!だからマジで重た・・・」
「俺は普段鍛えてるからな。10キロ太ってもおまえは重くない」

初めて夫とエッチしたとき、仁さんは私を姫抱っこして、ベッドにドサッと落としたことは、20年経った今でもよく覚えている。
でも今回は、私をそっとベッドに寝かせてくれた。
まるで壊れ物を扱うように。
そんな夫の優しさに、また涙が流れ出てきた。
夫に泣き顔を見られたくないと思った私は、咄嗟に仁さんに背を向けた。
寝る時のいつものスタイル・・ってちょっと待って!

もしかして、今からエッチするの!?

「そりゃ、あなたは筋トレ始めて14年の間、体型変わってないから・・・あの」と私は言いながら、体に巻きついてきた夫の手の上に自分の手を重ね置いた。

私の耳元で「なんだよ」と囁く夫の声は、気だるげで、そして眠そうだ。

「もうすぐ日香里帰ってくる、たぶん。だから・・・」
「寝るだけ。おまえがしたくないならしない。それに薬効いてきたせいか、俺も眠いし」
「・・・うん」

お昼前からするのはちょっと・・・背徳的な気がするから、夫が「しない」と言ってくれてホッとしてるんだけど、それ以上に残念って気持ちもあったりして・・・。

正直言うと、「エッチ大好きでーす!」までいかない私は、なければないで別に構わない。
でも夫は、2ヶ月に1度くらいの営みじゃあ、足りないのかもしれない。
だから他の・・・松坂さんと・・・。

夫を繋ぎとめるためにも、今の誘いに乗った方がよかった?
ビンビン硬くなってる熱いあそこを、無意識なのか、私のおしりにグリグリと擦りつけて、筋肉質の体は熱い・・のは普段どおりか。
でも・・・この人本当に眠そうな声出してるし。
この分じゃあ、してる途中で爆睡すると思う。
何より、私のへたくそな「テク」で、この人を満足させることはできない。
せめて仁さんが虜になるような悩殺ボディだったらいいのに、現実はプヨタルなおばちゃん体型で・・・。

「・・・なぁ」
「なに?」
「来週の週末、旅館行こ」
「来週は生理が来るからいや。それに宿泊券がいつ届くか分からないでしょ」

ああぁ!
もう私ってなんでこう、ツンケンと現実的に冷めた言い方しかできないんだろう・・・。

また密かにズーンと落ち込んでいる私の気など知ってか知らずか。
「あ、そうやなー」と言った夫は、さも今気がついた!みたいな、いつもどおりの言い方をして。
ボケとツッコミ具合が絶妙だと思えるから、だから・・・。

夫はクスッと笑うと、「やっぱ俺たちって相性いいんだよ」と、私が今、まさに思ったことを言った。

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