倦怠期です!
「俺さ、相手が好きだという気持ちが根底にあれば、相性とか違いとか、そういうの別に関係ないと思ってる」
「なるほど。うん、そうだね」
「俺な、おまえと一緒だから、1足す1が1000にも1万にもなると思えるんだ。他の誰でもない、おまえだから。だから仕事もがんばれる」
「あなた、仕事好きだし、部下には慕われて、今年も“理想の上司ナンバーワン”獲得したんだよね」と私が言うと、夫はフンと鼻で笑った。

「確かに俺は今の仕事が好きだ。でもな、今の仕事を続けることができてるのは、おまえと子どもたちを養うために稼がなあかん思うからや。そのためやったら、他の仕事をしても別に構わんし、タハラに居続けなあかんとも思うてない。ただ俺は、帰る場所は有り続けてほしいと思ってる。それさえあれば、俺は他に何もいらん」
「そっか」

じゃあ私は必要ないってことで、やっぱり・・・。
私の落ち込みを察したのか、「俺が言ってる“帰る場所”ってのは、おまえがいるところだぞ」と、すかさず夫は言った。

「・・・は?」
「日香里と遼はいつか家を出るから、あてにはしてない。でも、おまえにはずっと・・・俺のそばにいてほしい。できれば・・・俺の最期を看取ってほしい」
「はあ?何弱気なこと言って・・・」
「俺はおまえの前だと弱いんだ。それに男ってのはな、女より弱い生き物なんだよ」
「えっ?そうなの?」
「ああ。だからおまえが先に死ぬとか、絶対ありえねえ。おまえがいなくなったら俺、生きていけん・・・」

・・・この人、本当に浮気してるの?それとも過去したことあるの?
とてもそうは思えないような発言してくれちゃって。

マッチョな体してそんな弱気なこと言って、おばちゃんになった私に甘えるかわイケメンの夫のことが、むしょうに愛おしくなった私は、「好き」と呟いた。

でも夫はすでに、クークーと寝息を立てて眠っていた。


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