full of love~わが君の声、君の影~

4.きずつくまえに

【4月5日(土)11:00~赤坂プリンスホテル〇〇の間にて 社内パーティー有り。 同伴されたし】

主人から届いたメール。
5日って今週じゃない!
昨夜も顔を合わせているのにそのときに言えば良いものを・・

主人は私と会話を交わさない。
いつからかはもうわからない。
いつの間にか用があればメール、そうなっていた。

【わかりました】
私も黙ってメールを返す。


主人の会社のパーティに呼ばれたのは久しぶりだ。
主人にとっては昇進の祝いでもある。
私にとっても仕事のようなものだ。
ムリに笑顔を作ってしおらしく出来た妻を演じる。
それが当たり前だった。

それが崩れた。
まさか彼に会うとは全く予期していなかった。
主人の勤めるレコード会社の所属バンドであることは知っていたが、ミュージシャンにとってこういう場は関係ないところだと思っていた。


まるで初めて会ったかのように頭をさげた。
顔を上げた時の彼の顔が今も脳裏に張り付いている。
怒っているような泣きそうな・・そんな見たこともない表情だった。

自分がどんな顔をしているかもわからなくなった。

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