full of love~わが君の声、君の影~

家に帰ると誰もいないリビングに独り座り部屋をぼんやりながめた
メールの着信が鳴る
見ると主人からで『急な出張が入った。今日は戻らない』

ああまたあの女性(ひと)のところか・・と
いつもの。

いつのまにか好きな人はただの同居人になってしまっていた


急に何でこんなところにいるのだろうと思った
今まで当たり前のように守ってきたものがうつろいで見える

「欲しいものは何?」
答えは「何もない」

なんて自分は薄っぺらいのだろう


私より10歳も若い彼はあんなにステージで輝いてあんなに多くのファンを魅了している
そのためにどれだけの努力をしてきたのだろうか

私は今まで何かを得るために努力をしてきたことがあっただろうか
主人とのこともこのままでは良い訳がないことをわかっていながら踏み込む勇気がなかった


踏みこむことは自分の選んだ道が間違っていたと認めるようで怖かった


< 119 / 308 >

この作品をシェア

pagetop