full of love~わが君の声、君の影~

10.いっしょにいたい


年が明け、私は2日から仕事が始まる
職場のスーパーの休みは元日だけ。
年末休ませてもらったかわりに初日からフル稼働させられる;

大学生の咲はまだ冬休み。
どうせ暇でしょ~と洗濯を任せた。
それが間違いだった。

「エプロンも洗うよ~」と気を使ってくれたのはいいが
そのポケットに携帯が入っていた・・!
気がついた時にはすでに遅く完全にOUT。

よく友だちから珍しくハガキが届いたらと思ったら
「携帯が水没しました;ここにメールをくださると助かります」
と新しいメアドが書いてあったりして
「わーかわいそー」
なんて言っていたがまさか自分もその憂き目に会うとは;

「ごめんなさ~い!」
と平謝りの咲に「まあ大抵の人の住所はわかるから・・」となぐさめていたが
「あ!」
「え!どうしたお母さん!」
「晴喜くん今日引っ越しだ」

年明にすぐまとまて休みが取れるうちにと引っ越しをするとメールがあった
熱愛報道以来まわりをカメラマンにマークされていて
同じマンションの住民の視線が厳しくなってきたと言っていた。

でも
とりたてて急ぐ用もないし、向こうからの連絡を待てば済む。
携帯自体は長いこと愛用してきたし、写真なんかのデータが消えてしまうのは惜しいけど
もう買い替えの時期だったのかもね・・

「これも運命よね」
そう誰に言うともなくつぶやくと咲が青い顔になる。
「え!あきらめちゃうの!?」
え?そんなに必死にならなくても・・
「だって仕方ないじゃない」
「仕方ないって・・そんな・・」
何故か悲しそうにうつむく咲。

「やだ、そんなに責任感じなくても・・いけない!仕事行かなきゃ!洗濯物干しといてね!」
私はカバンをつかみ外へ出る。
携帯ショップ行かなきゃ・・でもしばらく忙しいんだよね・・まあ2,3日くらい使えなくても大丈夫よね・・」
けっこう私は呑気に構えていた。

実際ショップに行けたのは2,3日ではなく1週間後になってしまったのだが
その1週間の間、咲と晴喜くんが右往左往していたことなんて知る由もなかった。

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