full of love~わが君の声、君の影~

朝、目が覚めると俺を起こしてくれる手はもうなかった

「今日子さん!・・」
呼びかけてみるが返事はない

俺の目からまた勝手に水が出る
「また男のクセにとか言われるな・・」
ぐっとこらえる

部屋の窓から外を見ると
この家に越して来たとき今日子さんが植えたアボカドの木が2階まで伸びている
ひょろひょろと枝葉ばかり伸びて
実はおろか花すら咲いたことがなかった

その木が
ひとつだけ白い花をつけていた
季節外れの花

さくらの部屋から今日子さんの位牌と写真を持って来て
それを見せる


―――「『今年は実がなるといいね・・』」



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